2019年度  市民公開シンポジウム

 厚労省による平成27年度人口動態統計(確定数)の疾病別死因順位(死亡総数に占める割合)は,「悪性新生物(がん)」 が28.7%と最も高く,次いで「心疾患」15.2%,「肺炎」9.4%,「脳血管疾患」8.7%と脳血管疾患による死亡率は4位に挙げられている.また,平成28年度国民生活基礎調査概要で介護者が必要となった主な原因は,第1位が「認知症」18.0%,第2位「脳血管疾患」16.6%,第3位が「高齢による衰弱」13.3%である.脳血管疾患は,日常の生活動作(activities of daily living:ADL)や生活の質(Quality of life:QOL)に大きな影響を及ぼすことがわかる.

脳血管疾患とは,脳動脈に異常が生じることが原因で起こる疾病の総称で,脳卒中はその代表的な疾患に挙げられ,脳の血管が狭窄・閉塞することにより生じる脳梗塞や一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)などの虚血性脳卒中と,脳の血管が破れて生じる脳内出血やクモ膜下出血などの出血性脳卒中に分けられる.

脳卒中は,発症すると重篤な症状を引き起こし,前述したADLやQOLに大きな影響を与える.その要因となる高血圧,糖尿病,脂質異常,喫煙,心房細動,大量飲酒等の生活習慣病を防ぐことが第一の予防策と考えられているが,検査の技術革新により脳ドックでの画像診断が,発症を未然に防ぐことを可能にした.

また,脳卒中においては,発症から治療に至る時間が短いほど患者の予後に良好な結果が得られることが知られているが,CT,MRI,血管造影検査等の画像診断装置を用いた迅速かつ適切な画像情報の提供は,必要不可欠なものとなっている.当学会は,脳卒中を対象とした各検査において,画質を担保した適切な撮影条件による画像情報の提供を目的に,撮影技術の標準化を目指している.

本シンポジウムの主たる目的は,脳卒中(脳梗塞,脳出血)に関する正しい知識の普及と,予防,発見,外科的および血管内治療に関する放射線技術学の役割を認識していただき,いち早く病院にて早期の受診を願うものである.

また,危険という認識の強い‘放射線’の防護に関する公開講座は,当学会はじめ多くの関係団体が行なっているものの,その放射線を使ったCTや血管造影の検査に対する不安や疑問を取り除くことより,安心して放射線検査を受けていただくことができる.

医療現場では,診療放射線技師から提供される有効で質の高い検査,手術支援画像を医師が利用することにより,患者被ばくの低減や手術時間の短縮による医療安全や,限られた医療財源の有効利用も図られている.これらは,当学会の求める科学的根拠に基づく撮影技術を医療に提供および実践によるものであり,患者の有益性が増進に繋がっている.

このシンポジウムによって,一般市民への脳卒中に対する自己意識を向上させ,健康寿命の延長に貢献したい.

日 時 : 2019年11月17日(日)13:30〜16:30
会 場 : メルパルク京都
      〒600-8216 京都市下京区東洞院通七条下ル東塩小路町676番13
      TEL 075-352-7444(代)
参加費 : 無料
事前申込: 不要

2019年度 市民公開シンポジウム