平成30年1月21日(日)15:30 ~ 16:30 第1会場 鳳凰の間(東・中)
司会:第61回近畿支部学術大会 大会長 中尾 裕次(和歌山南放射線科クリニック)
『役立つということ -MRI 撮像技術の変遷から見えること-』
錦 成郎
(公財)天理よろづ相談所病院 放射線部技師長
まずは,このような貴重な機会を与えてくださった中尾裕次大会長ならびに実行委員の皆様に感謝申し上げます.
現在,私は当学会の副代表理事を拝命している機会でもあり,講演では私見を交えたお話になることをお断りしつつ,学会の現状を紹介したあとで,学会運営の基本である「将来構想特別委員会の答申」に触れたいと考えています.この答申は学会運営の羅針盤として尊重されているものです.今回はこの中身の主要な部分をピックアップして,それぞれの項目について,現在の学会事業との関連について解説したいと考えています.これらの話題の中に見え隠れする学会の在り方や将来展望を含め,これからの時代に考えていくべきことについて会員の皆さんと情報共有できたらありがたいと思っています.また,学会事業の広報として,ご存知かもしれませんが「会員への支援事業」についても改めて紹介させていただきます.
話は変わって,この年齢になると自分の生きざまを振り返る瞬間が度々あります.社会に生きるということの意味について,皆さんはどのように考えていますか.
表題にある「役立つ」という言葉は,扶ける・助ける・役だつ・資するなどに言い換えることができるようです.これこそ技術者冥利に尽きる言葉ではないでしょうか.少なくとも私はそのように感じています.勿論,多くの方々が職能としている医療専門職という立場も同様で,誰か(多くは患者)の役に立ちたいという思いでこの職業を選んだ,もしくは,後でそのことに気づいたのではなかろうかと推察します.ここは学術を議論する場なので,研究活動は自己を充足するだけでなく,社会貢献につながるということについて考える契機にしていただきたいと考えています.
研究は世の中のためになるからこそ,その成果が公に称えられます.「ノーベル賞」を目指して最先端の研究に邁進することは尊いことです.しかし,世の中に役立つ研究は,ノーベル賞級のものだけに当てはまるのではないということも大切なことです.日常業務に役立つ「工夫」もこの範疇に入ると私は考えています.研究施設において研究を生業として生活している方の研究環境は整備されています.一方で,日常は病室撮影などの業務に携わりながら,自分たちの疑問やアイデアを自分たちの手で解決して実現するための研究活動の成果は,多方面の技術を少しずつ着実に進歩させながら,知らない間に世の中の役に立っているのです. これこそ社会貢献以外の何ものでもないと思います.皆さんもこれまでにも増して研究活動を継続してください.
本講演では私の数少ない経験の一部を紹介しながらMR研究の歴史の一端を振り返ります.一連として紹介する事例そのものに意味があるわけでなく,研究の眼の付け所を鍛えるために必要なこととして,常に興味のある分野の研究の流れを把握しておくことの重要性と考え方を理解していただくためのものです.その時の先端技術の原理を整理することから見えてくる現有技術の限界を理解することが重要だと思っています.本質を見極める力を磨いてください.
それでは,皆さんとお会いできることを楽しみにしています.
ご略歴
錦 成郎 (にしき しげお)
1959年1月 奈良県生まれ
1980年3月 京都放射線技術専門学校卒業(現 京都医療科学大学)
1980年4月 (公財)天理よろづ相談所病院 1987年~MR担当
2007年4月 放射線部技師長
日本放射線技術学会
副代表理事・業務執行理事(総務担当),表彰委員,企画委員,大会開催委員
近畿支部監事
他学会
JRC理事
日本MR専門技術者認定機構 監事
一般社団法人日本医用画像情報専門技師共同認定育成機構 監事
著書
1)考えるMRI撮像技術(共著),文光堂,東京,2007.
2)放射線医療技術学叢書(18)MR撮像技術(共著),日本放射線技術学会,京都,2000.他.
3)その他